電磁波問題とは何か

電磁波問題とは何か ~世界、日本で何が起こっているのか~

2022年4月3日、藤沢市民運動団体である「電波塔を考える会・羽鳥」と「ネット藤沢」共催で、電磁波問題市民研究会の事務局長である大久保貞利氏を迎え、学習会を行いました。国は、ソサエティ5.0の方針に伴い、デジタル社会推進を加速させています。デジタル通信技術の進展により、私たちの生活は、便利で快適な生活になります。一方で、弊害とされることはないのでしょうか。

全国で携帯基地局トラブル

携帯基地局をめぐる住民トラブルは全国200か所以上あるとされています。市内でも各地域の住民より、住宅街に突如として携帯基地局が建てられたケースの声を聞くようになりました。見晴らしがよいリビングが、電柱によって景観が損なわれるだけでなく、電波を24時間発し、曝露し続ける状態を避けることは困難です。半径30メートルの住民には、個別訪問や通知が届きますが、ごくわずかな範囲の地域住民です。対象範囲から外れた場合は、何の説明もありません。藤沢市として、15メートル以上の建造物は説明会を求めることはできますが、約14.8mの携帯基地局は当てはまりません。

安全とは言い切れない

携帯基地局の電磁波は、1990年の電波防護指針によって規制値が決っており、その値内だから安全であると国は言います。しかし、管轄する総務省のパンフレットでも、はっきり安全とはうたっておらず、グレーゾーンであることを示しています。また、世界的な機関であるICNIRPのガイドラインは、今後も研究が必要と結論付けています。さらに、世界の電磁波規制値をみると、日本の規制は世界一緩いことがわかります。フランスでの規制値は同じではありますが、パリのような都会では、人口密度を考慮に入れて厳しい数値に変更しています。また、子どもや病院などの配慮が必要とする施設においては、厳しい規制値や有線など対応している国もくあります。デジタル先進国の北欧では、危険性の認知があり、電車の中では使わない人がほとんどのようです。必要な時に便利に使う対策を講じて快適な暮らしを意識しています。

                                                                     世界の裁判と調査結果

日本ではあまり報道されませんが、世界の状況は、基地局のリスクは確かにあり、リスクがないことを証明していない観点から、2009年ベルサイユ高裁、さらに2017年インド最高裁、チリの高裁等での勝訴判決があります。2018年米国NTP(国家毒性プロジェクト)では、10年で3千万ドルかけた大規模調査により、最終報告としてがん発症には明確な証拠があると結論づけています。また、2011年IARC(国際がん研究機関)は、低周波電磁場、高周波電磁波に発がん性の可能性があると示しました。2021年8月EUの立法機関である欧州議会が設置した専門委員会では、がんや生殖及び発達への影響、胚や胎児及び新生児の影響がないと言えない調査報告書でした。

リスクは市民が負う⁉

IARCの結果により、電磁波「100%安全説」の根拠が崩れました。それならば、携帯会社が自ら疫学調査を実施して「安全論」を証明しようとなぜしないのでしょうか。いまや企業の社会的責任の時代であり、コンプライアンスを重視するのは当たりまえで、経団連も同様に発言しています。100%安全でない電磁波を浴びる基地局周辺の住民の声になぜ耳を傾けるべきです。グレーゾーンのリスクに対し、疑わしきは回避し、治療原則でなく予防原則が大事です。携帯電話は個人で回避できるが、携帯基地局は個人では回避できません。安全性の立証は製造者側にあり、WHOもステークホルダー論を支持し、法律よりコンプライアンスが優先されます。100%安全でない場合、リスクは住民が負うことになることを忘れてはいけません。配慮が必要な人がいることを前提として誰もが安心して住み慣れた地域に暮らし続けられるために、説明を明確かつ丁寧に行うことこそが企業のコンプライアンスであり、市民自治社会です。