湘南海岸砂防林の薬剤散布について~エコネット1月号より~

2022年1月3日に書き上げ、「エコネット1月号」に掲載した記事です。

湘南海岸(藤沢市鵠沼海岸~大磯町東町)の砂防林は、飛砂や塩害、強風から市民生活を守り、景観や自然環境を保全する重要な緑地として、神奈川県が保護育成を進めています。マツ枯れ防止のため、2017年に有機リン系農薬からネニコチノイド系農薬に変更し、5月から6月の早朝に一回のチアクロプリド薬剤散布を行います。病害虫とされるカミキリムシが、センチュウをマツにうつさないことが目的です。

砂防林に薬剤散布されたネオニコチノイド系農薬は、強い毒性を持ち、非常に幅広い虫への殺虫効果、残効性から、人体や生物、さらに生態系に対しても影響があるのではないかといった様々な懸念があります。ミツバチ大量死の原因とも言われており、EU圏、台湾、韓国などで使用中止になり、国際的に問題になっています。日本は2018年⒓月農薬取締法改正に基づき、適用初年度の2021年度にグリホサートやネオニコチノイド系農薬など14有効成分が対象となり再評価している状況です。

平塚の砂防林近隣住民が農薬散布と思われる健康被害を受けていることから、2021年に県議会議員と共に周知策や防除方法の働きかけをしています。農薬散布でなく樹幹注入の対案は、約4倍の予算計上の必要があり難しいようです。しかし、散布日程がホームページ公開され、掲示板にQRコードを掲載するようになり一部改善はされました。藤沢市民においても、散布直後の鵠沼海岸で健康被害にあったとの声があり、近隣住民への周知が十分ではありません。

マツの健康状態、農薬の種類、散布ではなく樹幹注入の方法など多角的に検討し、市民の健康や生態系への影響を優先すべきです。使用しているチアクロプリドは低用量でも、ホルモンを攪乱する作用が報告されており、子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性があります。長野県松本市では、市民運動によりネオニコ系農薬散布が中止になりました。湘南海岸砂防林の農薬散布を中止するためには、たくさんの地域住民の声が必要です。