国は自治体をどのように導きたいのか

神奈川ネットワーク運動サマースクール    2020年8月5日ネット事務所にて

「地制調答申と自治体の捉え方」       講師:地方自治総合研究所 堀内 匠氏

 

総務省自治行政改革の本丸としての地方制度調査会がある。その答申を見ることにより、国はどのように地方を導こうとしているのかわかる。

1951年より地方自治法が施行され、現在は32次地方制度調査会。人口減少が深刻化し、高齢者人口がピークを迎える2040年頃、見えてくる変化と課題を克服する姿を想定し、現時点から取り組むべき方策を整理する視点が重要との認識を示している。課題解決の処方箋は、地方行政のデジタル化、公共私の連携、地方公共団体の連携、地方議会における多様性の確保である。限られた資源(人材、財源等)をめぐる過度な競争は分断を生じさせるので、ネットワーク型社会を構築することが必要である。

超少子高齢化、人口減少社会などの課題は依然として変わらない。しかし政権により政策は転々と変わり、何のための改革かわからなくなっている。対処すべき課題が官邸政策に合わせるようになり、課題が解決しないまま現在のSociey5.0に至っている。

まちを作ってくれる職員は、地域のことをとてもよく知っているエキスパートである。統治機構である技術職も大事ではるが、自治職としての機能を失わず地域から遠ざかることのないよう共存することが課題である。国のためにしているのではない、コミュニティの延長線上にある市民自治が重要である。市民の声を上げ伝えるためには、職員と一緒になって実行しなければならない。公共私の連帯が不可欠で、合意形成には労力がかかるがそこをはずしては市民社会の強さにつながらない。

AIで乗り切ろうとスーパーシティなどのモデルシティを作ろうとしているが、夢を見て勘違いしている感は否めない。AIは、マッチングシステムの数式に当てはめるのとは訳が違う。莫大なお金とデータがいるため、2040年には到底間に合わないし、小さな町には見合うわけがない。画一的な成功例をつくることで参考にはなるが、それを真似してもそれ以上素晴らしいものは難しいだろう。町の資源がそれぞれ違うわけで、多様性を否定するようなまちづくりでは持続可能性は無くなるであろう。

議会はカウンターパートとして充実させることで自治が充実し、実質的な合意形成となる。地域市民と市民団体の声を上げ伝えることは、地方議員の役目の一つである。市民自治を強くするために市民の声をすいあげ、国の画一的なやり方とは違う地域制度にあった政策を作っていくしかない。

「どんな町にしたいのか」自分事として、多くの人の総意をもって考えるときである。地域特性、資源、多くの人を巻き込みながら連携して取り組まなければ持続可能な社会は生まれない。小手先だけの政策だけでは、課題は変わらず山積していくであろう。それぞれの地域が市民自治社会を強くするしか、持続可能な社会に近づくことはできないと思いました。

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